とりあえず置いてるだけ
新規投稿 管理用
2025年10月29日(水) 21:54:51 ツイステ <660文字> 編集
初期表示に戻る
DASHBOARD
■全文検索:
複合検索窓に切り替える
■複合検索:
■ハッシュタグ:
■カテゴリ:
■フリースペース:
編集
▼特殊な表示モード:
RSSフィード
暖炉の火を見ていると、昔を思い出す。
僕達が施設を出て、始めて冬を迎えた頃。
僕のわずかな給金と、彼らが街で集めてきた銅貨や、恵んでもらった残飯でやりくりできていたけど、秋まで採れていた野草もなくなった。
僕達は飢えていた。
暖炉の前で火を眺めて、じっと寒さに耐えていた。
外には雪が降っていた。住んでいたボロ家はすき間がたくさんあって、かろうじて風を防いでいるだけで、冷たさは壁をすり抜けて僕達を刺してくる。
すると、ドアをひっかく音がしたんだ。お友達が、外は寒いから入れてほしいんだと思って、僕はすぐにドアを開けた。
目の前には真っ白なウサギがいた。その子は家の中に入ってきて、暖炉の方へと向かった。
皆がその子を歓迎した。
でも、あの子は、団子になっているドミニクたちの前を、通り過ぎた。
多分、皆わかっていたけど、止めなかった。
寒くて頭が回らなかったのもあるけど、やっとなにか食べられるかもしれない、って思ったんだよ。
ウサギは火の中に飛び込んで、声も上げずに燃えていた。
僕達は、ウサギが燃えるのを黙って見ていた。
黒く丸焦げになったウサギを、暖炉から出して、食べた。
外側しか火が通ってなかったけど、体の奥底に温度が戻ってきて、皮まで必死に食べた。
そこでやっと気がついたんだ。僕達は命を奪わないと生きていけないんだ、って。
知らなかったんだよ、施設ではリンゴの種ぐらいの大きさの肉が、スープに少し入ってるぐらいだったから。
その日から僕達は、罠を仕掛けるようになったんだ。